ワールドフォーラム08月例会のご報告

イエズス会・南欧勢力と織田信長
−本能寺の変の主謀者は誰か?−

戦国史研究家・立花 京子 氏

盛夏の暑さに閉口する今日この頃、皆様にはお元気にご活躍のことと存じます。
ワールド・フォーラム8月例会では、戦国史研究家 立花 京子 氏をお招きして、中世から近世への転換期に起こった謎の大事件、「本能寺の変」について、その背景となった、西洋の南蛮勢力が事件に果した役割についてお話戴きました。

昨年「信長と十字架」(集英社新書)という注目すべき近著を出版され、信長が掲げた武力による天下統一・支配の大義であった「天下布武」について研究 をされた戦国史に詳しい 立花氏 から、信長とイエズス会・南欧勢力との関係について「イエズス会・南欧勢力と織田信長 ー本能寺の変の主謀者は誰か?一」というテーマでお話戴きました。日本歴史を貫く最大の問題とは、西洋の進出・植民地支配の試みに如何に対応するかであり、中世・近世日本はいかに対抗しようとし、信長は如何なる役割を果たしたのかという視点で「本能寺の変」を再検討・再評価してみる必要があり、その観点からお話戴きました。

 信長の全国制覇は、南蛮と呼ばれていた、「イエズス会」を中心としイベリア両国王とポルトガル商人からなる南欧勢力と密接に結び付いていたもので、当時のイベリア両国による世界的なグローバリゼーションの一端を担うものであったとの仮説を、立花氏は立てました。これに基づき織田信長の武力による全国制覇を裏付ける研究が、戦国史研究家 立花京子氏の 信長の「天下布武の研究 」であります。グローバリゼーションという名の西洋の対日支配戦略は、「鉄砲と十字架と貿易」により担われて、「鉄砲」による「武力制覇」と「十字架」による「宗教・文化政策」及び貿易による「経済政策」で支配を実現しようというものでありました。日本の「植民地化」も想定され、それが実行されたなら、同時代に同時進行していったアメリカ大陸での中南米原住民インディオの文明の征服、すなわちアステカ帝国やインカ帝国の征服と原住民皆殺しと金銀財宝の略奪の運命は、東洋の東端日本でも起こり得たかも知れません。「南蛮勢力」の植民地化政策とはいかなるものであったのか?これに対して為政者達は、如何に対応しようとしたのか?キリスト教布教に来日したバテレン達は、どのような取り扱いを受け、何故植民地化の試み自体は断念したのか?そうした南蛮勢力と織田信長との密接な繋がりと、「天下布武」とはどのように関係したのか?信長の「バテレンのキリスト教布教容認策」は国内にどのような波紋を投げ掛け、「本能寺の変」といかなる関係を持ったのか?「本能寺の変」をめぐる新しい視座での歴史の謎に迫っていただきました。

プロフィール

立花 京子 氏

佐藤剛男代議士1932年東京生まれ。東京教育大学理学修士(数学)。朝日カルチャーセンターの古文書講座(林英夫講師)を9年間受講。その前後、一橋大学の池享教授、神奈川大学の三鬼清一郎教授のゼミに参加しながら、戦国史を研究。1991年「信長への三職推任について」(「信長権力と朝廷」所収)で、信長研究のパラダイムを一変させる。2002年お茶の水女子大学、人文科学で博士号を取得。著書には、「信長権力と朝廷」(岩田書院)「信長と十字架」(集英社新書)等。